効率的なエネルギー貯蔵システム ― エネルギー転換のバックボーン

地球温暖化防止目標を達成するため、世界はカーボンニュートラルな再生可能エネルギーの拡大を加速させ、経済・社会の脱炭素化を推進しています。こうした動きの結果、私たち人類のエネルギーの生成、伝送、消費のあり方が一変しつつあります。自然エネルギーを扱うには、その特性上、エネルギー供給の問題を考え直す必要があります。第一に、自然エネルギーは天候や季節によって発電量が変動します。第二に、太陽光や風力による発電は分散型の電力網を必要とし、大規模な洋上風力発電から住宅に設置された小規模な太陽光発電まで、さまざまなエネルギー生産者をインテリジェントに統合しなければなりません。このため、太陽光や風力の特性に対応できるデジタル化された高性能のエネルギー インフラが、自然エネルギーへの移行を成功させるための必須条件となっています。このようなインフラの必要性から、効率的な最新蓄電システムの重要性が高まっています。こうした蓄電システムは、電力変動を補いながら電力網のバランスを保ち、エネルギーの浪費を防ぐのに役立ちます。市場の専門家は、2030年までに世界で年間30 GW以上のエネルギー貯蔵設備が設置されると予測しています。

再生可能エネルギーへの転換に伴い、必要な時に必要なエネルギーを効率よく蓄えることがこれまで以上に急務となっています。歴史的に見ても人類はこの課題に対して創意工夫をこらしてきました。たとえば、力学的エネルギーを蓄えるために分銅蓄圧器が長年使われてきました。教会の塔にある時計盤を何日も、あるいは何週間も作動するのは分銅蓄圧器のおかげです。何世紀にもわたり、人類は弾み車や圧縮空気などの機械的な手法を試し、電気化学の原理から最終的に電池に到達しました。大規模かつ長時間のエネルギー貯蔵や昼夜のバランスを調整する技術としては、水力発電と揚水発電所以外存在しなかった時代が長く続きました。現在、新たに2つの技術が登場しつつあります。将来的に大きな可能性を秘めているとされる2つの技術は、高性能なバッテリー システムとグリーン水素です。その大きな理由として、水素は大量に貯蔵でき、輸送や利用がフレキシブルにできる点が挙げられます。さらに、ポータブルなエネルギー貯蔵デバイスの重要性が増しているという側面もあります。キャンプなどアウトドアでの電源として、また、停電時の緊急用バックアップとしてこうしたデバイスを利用することができます。

エネルギーの需給バランス

電力会社の視点から見ると、蓄電システムの価値は送電網の信頼性と安定性を高め、送電時の容量制約のバランスを取りながら天候に関連した需給変動に対応できる点にあります。具体的には、停電や自然災害、技術的な問題などの不確実な状況に直面したときに解決策となり、他の電源が利用できないときにエネルギーを供給することができます。送電の際、需要も大きく増加していると容量の限界が致命的になることがあります。そのような時、蓄電システムはピーク時に必要なエネルギーを引き伸ばし、太陽や風がない時間帯を補い、需要と供給のミスマッチを解消することができます。商業施設や住宅、たとえば屋根に太陽光発電システムが設置されているオフィスや住宅では、日中にエネルギーを貯蔵して、夜間に使用したり送電網に供給したりすることが可能です。最後に、電気自動車が一般に受け入れられるかどうかはエネルギーを効率よくバッテリーに蓄えられるかどうかにもかかっています。電気自動車は、低コストで高密度かつ信頼性の高いバッテリー ストレージに依存しており、最終的にはそれ自体がスマート グリッドの一部となる可能性があります。つまり、自動車に搭載されたバッテリーを利用して、蓄えたエネルギーをグリッドや建物に給電することも可能なのです。

非常に複雑な分散ネットワークに安定性をもたらす半導体

電力網は、発電所から産業界や民生部門に電力を一方通行で流す送電系統から、非常に複雑な分散型ネットワークへと進化しています。そのため、半導体技術によって実現する移動型・定置型エネルギー貯蔵システムは、エネルギー サプライ チェーン全体において不可欠な要素となっています。半導体により、再生可能エネルギーへの転換によって引き起こされる需給状況を蓄電システムで管理するための幅広い技術的アプローチが生まれています。エネルギー サプライ チェーンのさまざまなポイントにおける効率的なエネルギー変換にも、蓄電を最大限に活用するためのバッテリー マネジメントにも、最先端の半導体技術が必要とされているのです。電力が生産・消費されるすべてのポイントが、システムにおけるアクティブかつインテリジェントなノードになる可能性があるため、インフィニオンの半導体によって実現されるエネルギー効率は、すべてのインターフェースで極めて重要です。

アプリケーション ページ: 送電・配電

アプリケーション ページ: バッテリー マネージメント システム

エネルギー貯蔵システムの定義: 電力変換とバッテリー マネージメント

半導体によって実現される蓄電システムには、エネルギー効率の高い電力変換システムバッテリー マネージメント システムという2つの主な機能があります。電力変換システム (PCS) は、AC/DCとDC/AC変換を行い、エネルギーを電池に流して充電したり、蓄電池から交流電力に変換して電力網に供給したりします。この電力変換プロセスのエネルギー効率は半導体技術に大きく依存します。

しかしエネルギー貯蔵に関しては、電池を安全かつ効率的に管理することも同様に重要です。そのため、バッテリー マネージメント システム (BMS) は蓄電システムの重要な構成要素となっています。BMSは専用ICとシステム制御と通信を行う補助的な役割のマイクロコントローラーをベースとしており、電池の保護、充放電、電池バランシング、電力最適化、健全性評価などを行います。

私たちの目標は、使用済みバッテリーを可能な限り活用するためのソリューションを開発することでこの分野における持続可能性を推進することです。そのためインフィニオンは、半導体技術の力を活用して、古いバッテリーを再利用するバッテリー マネージメント アプローチをサポートしています。

アプリケーション ページ: 蓄電システム

インサイトおよび詳細: ホワイトペーパー、アプリケーション プレゼンテーション、オンデマン ド ウェビナー

エネルギー貯蔵ソリューションのための幅広いインフィニオン ポートフォリオ

インフィニオンの半導体ソリューションは、エネルギー貯蔵システムの開発をサポートします。インフィニオンはエネルギー生成、送電、電力変換、バッテリー管理における独自の専門知識を保有しており、効率、革新性、性能、最適コストの面でエネルギー貯蔵ソリューション (ESS) の進化を求める企業にとって、選ぶべき最適なパートナーです。

インフィニオンは、ディスクリートおよびモジュール ソリューションの両方において、幅広いエネルギー貯蔵システム設計に理想的な市場をリードする製品を提供しています。たとえば、CoolSiC™ MOSFETのような最新世代のワイドバンドギャップ半導体は、太陽光発電システムと関連のエネルギー貯蔵機器において、最大50%という大幅な電力変換効率向上を実現することが可能です。CoolSiC™ はエネルギー損失を低減します。つまり、利用できるエネルギーが増えるということです。バッテリー バンク内のスーパージャンクションMOSFETをCoolSiC™ MOSFETに変更することで、バッテリー サイズはそのままで約2%のエネルギー増を実現できます。

電力変換:

バッテリー マネージメント システム:

エネルギー効率を高めるユースケース