スマートな節電

人類は何百年もの間、食料を冷やすことで保存しようと試みてきました。冷蔵庫は家庭にこれまでになかった利便性をもたらし、現在はインテリジェントなパワーコントロール機能によって電気代も節約できます。冷蔵庫は家電の模範となる道を示しています。

冷蔵庫の歴史

アイスボックスから保冷庫へ

肌を刺すような冷たい風が吹く、どんよりと曇った1806年11月の朝。
凍った湖の岸辺に積み重ねられた巨大な氷のブロックの上に雪が舞い降りています。数名の男たちがすでに1つ目のブロックを吊り上げてスロープの上に降ろし、それを4頭の馬に引かせた馬車に積み込んでいます。氷のブロックはまもなく、ニューイングランドから常夏のカリブ海に向けて、長い旅に出発するところです。

食料を保存するために冷やしたり、冷たい飲み物を楽しんだりすることはすでに古代から行われていました。そのために、山奥から切り出した氷を地中深くの氷室で保存していたのです。19世紀になると、氷の貿易の重要性が急に高まり始めました。凍った湖や川から巨大な氷の塊を切り出して一定の大きさに整え、これを海上で遠くまで運ぶには、膨大な時間と労力が費やされました。

冷蔵庫の発明

氷配達人と子供(ベルリン、1957年)

研究者たちが人工的に氷を作ることに成功した後は、食料の保冷は簡単かつ安定的にできるようになりました。しかし、製氷プロセスには化学物質が用いられ、その中には有毒なものも含まれていました。このような経緯を経て、ようやく冷蔵庫が発明されたのです。アメリカとキューバでは、すでに1930年代には電気冷蔵庫が普及していました。それとは対照的に、ドイツでは1950年代に入ってもなお氷配達人が各家庭に氷を届けていました。この氷を特殊な裏打ちを施した木製のキャビネットの中に入れ、食料を冷やしたのです。

電力を大量消費する家電

労働力、化学物質、あるいは電力も必要な冷蔵庫は、大変な労力を要する贅沢品であるばかりか、環境にも影響を与えます。

私たちは毎日、家庭でさまざまな家電製品を使用しています。洗濯機、乾燥機、エアコンから冷蔵庫まで、あらゆる白物家電が私たちの毎日の暮らしをシンプルで便利にしてくれます。従来の白物家電には、共通の特徴が1つありました。モータには「オン」と「オフ」の2つの状態しかないことです。そのため、モータの電力レベルはフルかゼロかのどちらかでした。つまり、フルパワー時には最大レベルの電力を消費するのです。これらの家電に要するコストは、その家電の製品寿命までの電気代を含めると、値札よりもはるかに高くつきます。例えば、2015年現在、いまだに使用されている騒音も消費電力も大きい旧型冷蔵庫は世界中に12億台あると推定されています。この旧型冷蔵庫は1台で、1年間に約480キロワット時(kWh)のエネルギーを消費します。

インフィニオンの半導体で世界のすべての冷凍庫をインバータ化することで、スウェーデンが1年で消費するエネルギーを節約できます。

Daniel Scharfen、事業開発責任者

発想を切り替え、寿命を待つのをやめる

自宅のソファにゆったりと腰かけ、読書に夢中になっている夕べのひととき。ふと、チョロチョロと水が流れるような微かな音を耳にしたものの、それがどこから聞こえてくるのか見当が付きません。すると突然、金属的なガタガタと低く響く音が鳴り出しました。平穏なくつろぎの時間は終わりを告げたのです。これまでに何度も、冷蔵庫は振動や音を大きくして、その存在をアピールしてきたはずです。まったく問題なく働いているように見えましたが、部品の消耗が進んでいた(または寿命が近づいていた)のかもしれません。

インバータ化していない家電のモータはスピード調節ができないため、常にフルパワーで運転しています。このため、部品の消耗が比較的早く、故障しやすくなります。さらに、これらの機器は音が大きいという特徴があり、気に障る人もいるでしょう。

現代の白物家電

デジタルインバータ

しかし、白物家電にスマートさを期待しなくてよいのでしょうか?例えば、家電が自ら必要とする電力だけを消費するようなスマートさです。というのは、家電はいつ、どれぐらいの電力が必要かを正確に把握しているからです。必要とされるインテリジェンスは、現在すでに利用できます。この技術はさまざまな白物家電に採用され、その数はますます増え続けています。インフィニオンのチップは、センサとマイクロコントローラ、およびパワーチップ間の相互作用によって、家電をスマートにします。これらの異なる種類の半導体を組み合わせることで、電流を最適な状態に調整できます。技術者はこれを周波数インバータ、あるいは単にインバータと呼んでいます。

「モータは、必要な分だけ稼働するように、インテリジェントに制御されなければなりません。」

Daniel Scharfen、事業開発責任者

大きな効果を生み出す小さな部品

原理はシンプルです。冷蔵庫を効率的に運転するために、センサは温度、湿度、モータの回転速度などのデータを絶えず収集しています。このデータに基づき、ミニコンピュータあるいはマイクロコントローラが要求される制御コマンドを計算します。省エネを実際に実現するのはパワーチップで、コマンドを実行してモータの回転速度を最適化することで、冷蔵庫の温度を一定に保ちます。この方法は、モータのオン/オフを常時切り替えるよりもずっと効率的です。

私たちはインテリジェントな家電が未来のスタンダードになることを目指しています。その目標のために、インフィニオンは、センサ、マイクロコントローラ、高効率パワーチップなどのインバータ化の基盤となる半導体を開発しています。

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エンブラコ社のコンプレッサー

インフィニオンのデバイスを搭載した省エネルギーコンプレッサー

私たちの日常生活になじみ深い冷蔵庫は、インテリジェントなパワーコントロール機能によって、電気代も節約できます。最新型冷蔵庫において、インフィニオンの半導体を内蔵したエンブラコのコンプレッサーが実現する省エネについてご紹介します。

コンプレッサーはいわば冷蔵庫の心臓部です。エンブラコは、この重要な技術を有する世界有数のメーカーで、可変スピードコンプレッサーの開発も先駆けて行ってきました。エンブラコのフルモーションインバータは必要に応じて冷却能力を調節することで、最大40%の省エネを達成します。

スマートなインバータ化の原理

冷蔵庫を効率的に運転するために、センサは温度、湿度、モータの回転速度などのデータを絶えず収集しています。このデータに基づき、ミニコンピュータあるいはマイクロコントローラが要求される制御コマンドを計算します。省エネを実際に実現するのはパワーチップで、コマンドを実行してモータの回転速度を最適化することで、冷蔵庫の温度を一定に保ちます。この方法は、モータのオン/オフを常時切り替えるよりもずっと効率的です。

エンブラコのインテリジェントインバータには庫内の温度を認識するセンサが内蔵されています。このセンサはコンプレッサーに信号を送り、より効率的な方法で目標温度に達するようにコンプレッサーの速度を変更します。インバータにはつの高耐圧CoolMOSトランジスタと3つのハーフブリッジドライバから成るインフィニオンのソリューションが採用されているため、エンブラコのコンプレッサーは冷蔵庫が実際に必要とする冷却温度になるように速度を調整できます。

環境にやさしいコンプレッサー

エンブラコ社のVESFコンプレッサーの動作をご覧いただき、最大40%のエネルギーを節約できる理由をお確かめください。

利点のまとめ

  • 従来のコンプレッサーに比べ、最大40%の省エネを達成
  • 全負荷非連続運転を行うことで、騒音と振動が極めて小さく、市場で最も静音性の高いコンプレッサーを実現
  • エンジンの始動が緩やかなため、定負荷時の運転時間と機械的摩耗を低減し、耐久性が向上
  • 庫内の温度が安定することで、より良好な食品保存が可能

 

エンブラコ社について

冷蔵庫用密閉型コンプレッサーの大手多国籍企業であるエンブラコは、イノベーションとサステナビリティの実現に情熱を注いでいます。エンブラコは環境に優しいソリューションを提供するために、技術の革新に挑戦し続けています。

だからこそ、エンブラコとインフィニオンは協力し、世界のエネルギー消費の削減に努めています。 エンブラコのイノベーションに関する詳細はこちら

 

更新:2016年11月