玄関を出たとたんに車庫のドアが開いて、外出中は照明が消えて、夜に自宅の中にいるときは屋外のカメラによって安全を確保できます。「スマートホーム」とは、集合住宅や戸建て住宅で、技術的システム、自動化プロセス、およびネットに接続され遠隔制御された機器を利用することを言います。その目的は、家庭での生活の質および利便性、さらには、居住者の安全とセキュリティを向上することです。スマートホームアプリケーションは、エネルギー利用の効率化にも役立ちます。
急速な技術の進歩、デジタル化の進展、増加し続けるデータストリーム…ネットに接続された「スマートホーム」という概念は、ますます話題になり、魅力的になっています。しかし、そもそも「スマートホーム」とは何でしょうか。この技術は、何を基盤としているのでしょうか。どのようなメリットやリスクがあるでしょうか。未来のスマートホームは、どのようなものでしょうか。このメガトレンドについて、さまざまな観点から見ていきます。
ワトソンさんは、また寝坊しました。朝食をとる時間がありません。しかし、最低限必要なことがあります。時刻どおりに、コーヒーメーカーが1日の初めに温かい飲物を、決まった量の泡立てたミルク入りで提供します。ワトソンさんは、迅速に、職場でのストレスの多い1日を過ごす用意ができました。人感センサーが作動して、車庫のドアに通知すると、ドアが開きます。急いでいたので、アイロンと照明のスイッチを切るのを忘れていました。でも、心配ありません。走行中にスマートフォンで対処できます。ワトソンさんは、職場から洗濯機のスイッチを入れます。これで、仕事が終わったときに、ちょうど洗濯が終わっているようになります。子どもたちは、学校から無事に帰ってきたでしょうか。玄関に設置した室内カメラの録画を見て、お父さんは安心します。
ワトソンさんが帰宅する直前に、スマートフォンからロボット掃除機のスイッチを入れ、さらに「勤務後」のシナリオを起動します。掃除機が仕事をしている間に、リビングルームは心地よい照明に包まれます。暖房が働いてあらかじめ設定された快適な温度が保たれ、ソフトジャズがリラックスした雰囲気を作り出します。夜遅くなると、シャッターが閉まります。これを合図に、庭の屋外カメラが動作を開始して、中庭と庭を監視します。
「スマートホーム」とは、最新技術によるシステム、自動化プロセス、ネットに接続されたリモートコントロール機器などを使用するマンションや住宅を言います。この機能の主な目的は、生活の質と家庭での利便性を向上することです。その他にも、ネットに接続されたリモートコントロール機器によるセキュリティ強化、エネルギー消費の効率化などがあります。
洗濯機、照明器具、コーヒーメーカーなどの家電製品は、時間を指定して制御できます。人感センサー、カメラ、シャッター、サーモスタットなどの機器が、ユーザーのプログラムしたプロセスを起動します。スマートホームの核心部分は、中央制御ユニットです。そこには、さまざまなスマートコンポーネントが接続されていて、PC、スマートフォン、タブレットなどから操作することができます。通信や機器の制御には、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBee、Z-Waveなどの一般的なワイヤレス通信規格が使われています。中央制御ユニットは、ハブまたはゲートウェイと呼ばれることもあります。
日常生活をより便利で快適なものにしたいと思うのは、人間として自然なことです。スマートホームの事実上の前身である「ホームオートメーション」という分野は、技術の進歩、とくにインターネットとコンピュータを通じて生み出されました。1950年代のSF小説では、機械によって完全自動で監視され制御された住宅について、初期の構想が描かれています。1999年のディズニー映画「スマートハウス」は、家庭用コンピュータについての物語で、スマートな機械が自分自身の生命を獲得した結末が描かれています。この映画の中でディズニーは、住宅のインテリジェント制御ユニットが嫉妬の感情を持つようになるという場面で、図らずも先見の明を示しています。実際には、幸いなことに、機械が感情を「生み出す」までには、まだ数年かかりそうです。
科学者は、30年以上にわたって、ネットに接続した家電製品とその利用の自動化に取り組んでいます。しかし、スマートホームという話題が広く一般に関心を持たれるようになったのは、わずか15年前からのことです。その主な理由は、高齢化社会、環境意識の高まり、持続可能なエネルギー供給に対する期待との関連など、さまざまなトレンドによって現状の課題が生じてきたからです。デジタル化の進展および自室内での利便性を拡大する新しい手段が出現したこともあって、スマートホームは、2000年前後に、一般的に関心を持たれるようになりました。
2001年にドイツのデュイスブルクに設立された、フラウンホーファーインハウスセンターは、ドイツ語圏諸国におけるモデルプロジェクトです。このプロジェクトでは、住宅環境のスマートハウス分野において、新しいシステムソリューションや製品の発掘およびテストを実施しています。ミュンヘンにある「現在の家」では、2005年から2011年まで、中央制御の電子プロセスによるコネクテッドホームを展示していました。ベルリンのドイツテレコムによる最初のT-Comハウスは、2005年に公開され、見学者の注目を集めました。このモデルプロジェクトは、さまざまな家電製品をネットに接続して、さまざまな入力機器によって操作することに重点を置いていました。
今まで何十年もの間、さまざまな家電製品が、日常生活を快適にし、プロセスを高速化することで、時間と労力の節約に役立ってきました。では、スマートホームは、それ以外にどのようなメリットがあるのでしょうか。スマートホームがなければ、機械が動作を開始するためには、必ず人間から指令を出す必要があります。すなわち、人間が、各機器を一つずつ適切な時期に起動することになります。スマートホームでは、コンポーネントが相互に通信可能なので、人間がこの作業をしなくてもよいのです。機器が起動すると、シナリオに応じて、またはそのプログラムの内容に基づいて、独自に住宅内での決まった作業を制御したり監視したりします。相互運用性は、魔法の言葉です。機器が相互運用可能であれば、機器は相互に通信することができるのです。それによって初めて、シャッターが閉まったとき、自動的に警報システムが起動できます。それによって初めて、窓が開いているとき、自動的に暖房のスイッチが切れます。要素間の相互運用性がなければ、住宅はまったくスマートではありません。
利便性の拡大の他に、エネルギー効率の向上とセキュリティの強化も重要な点です。スマートホームのサーモスタットが、WiFi経由で窓と通信するようになれば、窓が開いていることを検知して、温度を調節することができます。この場合、サーモスタットは、他の機器のセンサーから家に誰もいないという情報を受信すると、直ちに暖房を停止します。スマートLED照明は、時間や部屋ごとに自動的に異なる色調で照明します。中庭の屋外カメラが敷地内で物体の動作を感知したときには、強盗のおそれがあるので、屋内カメラも警戒態勢になります。高齢者が住んでいる家では、朝、いつものように人がベッドから起きたかどうかを、感圧マットから親族に通知できます。
どうすれば住宅をスマートホームに改造できるでしょうか。技術的なノウハウがなくても、必要なコンポーネントを設置して、設定することができます。計画にあたっては、次のような点を考慮しなければなりません。
多くの技術にはメリットがありますが、リスクを伴うので、ユーザーは注意してリスクを最小化するようにしなければなりません。スマートホームでは、ネットに接続された機器、およびWiFiなどの無線による通信において、何らかのリスクが潜んでいます。まず第1に、個人情報が悪用される可能性があります(カメラの録画、写真など)。第2には、スマートホームの各コンポーネントを外部から操作するというサイバー犯罪のリスクがあります。米国のソフトウェア会社シマンテックの「サイバーセキュリティインサイトレポート」最新版の中で、ドイツの1,000人をむ世界中の2万人以上のスマートホームユーザーを調査しています。その結果を見ると、時としてデータや機器へオンライン犯罪からアクセスされやすくしている場合があることがわかります。
しかし、調査対象者は、他人の個人情報保護も含めて、インターネット上で個人情報を保護することが重要だとわかっています。たとえば、屋外カメラは、所有者の敷地内だけを撮影するようにしなければなりません。撮影する範囲をユーザーが指定できる機種があります。隣接する敷地の一部がカメラに撮影されますが、その領域はグレイアウトまたはモザイク処理されます。例外的なケースとして、スマートホームのユーザーデータを、公的機関が犯罪捜査に利用することも認められています。しかし、現状の法的見解によれば、それは、殺人などの重大犯罪の場合に限って想定されるものです。スマートホームが賃貸マンションである場合には、入居者の不十分な換気が原因でかびが生えたのか、それとも建物の欠陥があったのかを調査するために、窓の開閉および暖房に関するデータへアクセスすることが考えられます。
ほんの少し手間をかけたり、古い習慣を見直したりすることで、スマートホームのセキュリティは大幅に強化されます。
「ドイツのスマートホーム市場2017-2022 詳細情報」の調査によれば、ドイツのスマートホーム市場は、2022年までに3倍に増加して43億ユーロになると見られます。したがって、年間成長率は、今後5年間の平均で26.4%になります。既存の産業、たとえば機械工業では、最大で年6%の成長率であるのと比較してみてください。技術が急速に進歩するため、多くの革新的なスマートホームの構成要素が、わずか数年のうちに普及するでしょう。イケアでは、カメラで食品を検出して、その材料に基づいてレシピを提案するスマートテーブルを開発中です。これを使えば、ごみを減らすとともに、手元にある食品をより有効に活用できます。将来は、スマートミラーが、皮膚の状態を分析して、それに基づいてスキンケア製品を勧めてくれるようになるでしょう。
従来のロボットにホームヘルパーをさせるという、ポップカルチャーでもてはやされた考え方も、数年の内に実現しているでしょう。ロボットが洗濯をしたり、食事や飲物を提供したり、その他にも、住人に有益な情報を教えてくれたりします。未来のスマートオーブンでは、内蔵カメラを利用して、調理する過程をその場で観察できるようになります。2030年のトイレは、ユーザーの健康状態に関する情報を提供し、さらには妊娠検査も実施できるでしょう。
生態系の持続可能性と生活の質の向上に対するニーズに応える次の大きな進化は、スマートシティです。住民は、自動運転の電動自動車またはネットに接続された電動自転車で職場に通勤しているでしょう。荷物はドローンが配達します。人々は、汚染物質を排出することなく高速にハイパーループで移動するでしょう。それは、一種の巨大な真空チューブシステムで、空気のないチューブの中を磁気浮上技術によって乗客や貨物が輸送されるというものです。技術の予見者であるテスラ社CEOのイーロン・マスクによれば、それが実現すると、サンフランシスコからロサンゼルスまで570kmの移動が、たった35分になります。それは、昔ながらのものにより多くの時間を使えるということです。乗客との楽しい会話、次の会議へ行く途中での疲労回復に役立つ昼寝、本物の紙でできたすばらしい本。
玄関を出たとたんに車庫のドアが開いて、外出中は照明が消えて、夜に自宅の中にいるときは屋外のカメラによって安全を確保できます。「スマートホーム」とは、集合住宅や戸建て住宅で、技術的システム、自動化プロセス、およびネットに接続され遠隔制御された機器を利用することを言います。その目的は、家庭での生活の質および利便性、さらには、居住者の安全とセキュリティを向上することです。スマートホームアプリケーションは、エネルギー利用の効率化にも役立ちます。
さまざまなスマートホームアプリケーションが多数あって、いずれも私たちの日常生活を便利にすることを目的にしています。たとえば、外出しているときに家の照明をつけたままだったことに気づいたら、スマートフォンを使って簡単に照明を消すことができます。それとは逆に、帰宅する前に、暖房を希望の温度に設定したり、洗濯機を始動したりすることもできます。ロボット掃除機のようなアプリケーションも、スマートフォンやタブレットから容易に操作できます。多くのコンポーネントが、ユーザーのプログラムしたプロセスを実行します。たとえば、シャッターを閉めると、屋外のカメラや人感センサーが動作を開始します。その他の家電製品、たとえば、照明やコーヒーメーカーは、時間制御、すなわち、指定された時刻に自動的にスイッチが入れたり切ったりします。
スマートホームの機器が起動すると、シナリオに応じて、またはそのプログラムの内容に基づいて、独自に住宅内での決まった作業を開始し、制御し、監視します。特に、機器が相互に通信する場合には、人間の作業を軽減してくれます。それによって初めて、たとえば、窓を開けると、直ちに暖房のスイッチが自動的に切れます。このシステムの核心部分は、中央制御ユニットです。ハブまたはゲートウェイとも呼ばれるもので、これを通じてさまざまなコンポーネントが相互に接続されます。このテクノロジーの通信や制御には、Wi-Fi、Bluetooth、ZigBee、Z-Waveなどの一般的なワイヤレス通信規格が使われています。
スマートホームのきわめて重要なメリットは、個別の機器やプロセスを適切なときに手動で起動する必要がないので、ユーザーが多くの作業から解放されることです。それと同時に、たとえば休暇で留守にしていても、人感センサーやカメラのような機器によって自宅を監視できるので、強力なセキュリティを確保できます。サーモスタットやスマートライティングもエネルギー節約に役立ちます。たとえば、窓を開けると、直ちに暖房のスイッチが自動的に切れます。注目するべきメリットは、特に技術的ノウハウがなくても、スマートホームは、比較的容易に構築できることです。
スマートホームについて多くの人が質問するのは、自分の家のアプリケーションがどれくらいセキュアなのか、ということです。たしかに、たとえばカメラが家の周囲を録画するときに、個人情報が悪用される可能性があるかもしれません。また、ハッカーがスマートホームのコンポーネントにアクセスして、不正に操作するリスクもあります。では、どうすればシステムのセキュリティを強化できるのでしょうか。それは、わずかな手間で実施できます。行うべきこととしては、たとえば、セキュリティソフトウェアの利用と、その定期的更新です。多くのユーザーは、ネットワークにパスワードを使用していないか、使っているとしても弱いパスワードなので、この問題はすぐに改善できます。さらに、たとえばマイクのような個別機器の機能は、必要でないときには無効にすることができます。
明らかなことが1つあります。トレンドがスマートホームに向かっていることです。ドイツのスマートホーム市場だけでも、2022年には、今の3倍の43億ユーロになると予測されています。急速な技術の進歩によって、将来は、多くの新しいコンポーネントが家庭に入ってくるでしょう。特に注目されているのは、家庭用ロボットです。将来に向かっての次の大きな段階は、スマートシティです。家庭だけでなく、自動車、インフラ、ドローンも相互に接続されるようになります。
更新:2017年11月